仲良し記念小説(Schokolade・舞人さま)
おおおお! 一歩受小説サイトさんが登録されてる…! とサーチエンジンから訪ねまして、その勢いのまま拍手を送らせていただいたら…な、なんだってェ!? と衝撃を受けましたwww だ、だって大神宛に書き下ろしをいただいてしまったんですよ…!
いやあもう…!「そんなに下心が透けていたのかしらヤダ恥ずかしいッ! でも嬉しいどうしようッ!?」と大興奮したのは言うまでもありませんね(フンフン鼻息の荒い私はさぞ想像しやすry)
いただいてから掲載までかなーり時間が経ってしまいましたが、ようやく自慢することができたので大神は大変満足しておりますw
素敵小説の締めくくりが私の感想ではあまりにも残念すぎるので、今回も感想は自重させていただきました。舞人さん! 鷹一に飢えている私を助けてくださってありがとうございます…!
不機嫌の儘に逢瀬を望む
鴨川ジムを出て、木村と一緒に青木のバイトするラーメン屋へ向かう。
今日は一人足りないっすね、と湯気の立つラーメンを差し出しながら呟かれる青木の言葉に眉間がぴくりと動いた。
「あいつは家の手伝いがあるんだとよ」
「釣り船屋って忙しそうっすよね」
一歩の筋肉は釣り船屋の手伝いで長年培われたもの。ならば、相当の忙しさに違いない。
それがわかるからこそ、普段は人間じゃないとまで言われてしまう鷹村も強引に一歩を誘わないのだ。
母一人、子一人、父親のいない状況は何かと辛かろう。たった一人で自分を育ててくれた母の苦労を察しない程に一歩は不出来な息子でもない。
勿論、それは一番近い距離で一歩の成長を見ている鷹村でなくとも十分に理解できた。
しかし、理解はできても可愛がってる弟分の不在に寂しさは伴うもので、今日ばかりは青木も木村も少しだけ大人しい。
「何だよ、お前ら!しけたツラしやがって!」
「いやー、一歩が真ん中にいねぇってのがね」
「なんか調子出ないんすよ」
「ふん!仕方ねぇだろうが!それともあいつを無理矢理引きずってきた方がいいってのか!?」
「そ、そりゃ絶対に駄目っすよ」
「んなことしたら一歩に嫌われますって、鷹村さん」
「けっ、あいつは俺様を嫌ったりしねぇよ!」
多分な、と心の内で密かな不安を呟く。こんなのは俺様らしくねぇ。
鷹村は少しばかり不機嫌な気持ちを押し殺しつつ、青木が作った熱々のラーメンを一気にすすりあげた。
いつもの味と変わらない筈なのに、美味いと感じる筈なのに、何故かちょっと物足りない。
当然、その理由は言葉にしなくともわかりきっている。あいつがいないからだ。
「木村ぁ」
「はい?」
「俺様の隣に気易く座ってんじゃねぇ」
「・・・・一歩がいないからって俺に八つ当たりするのやめろよ、あんた」
本気で機嫌悪いな、こりゃ。木村は浅い溜息を吐きながらこっそりと気付かれぬ様に鷹村の座る椅子との距離を空けた。
その間、驚く程のスピードでラーメンを完食し、すぐさま水の入ったコップを手に取る鷹村。
ごくり、ごくり、と大きな音を立てる喉さえも激しく憤っているように思えた。おかげで嫌な緊張感が店中に伝わってしまう。
他の従業員もかなり気まずそうだ。逸早く鷹村を店から出さないと他の客にも迷惑をかけるに違いない。
そう判断した木村は鷹村が水を飲み干す瞬間を見計らって立ちあがろうとした。
普段の状態で不機嫌な鷹村も最悪だが、一歩のいない現状ではそれを遥かに上回る。とても自分一人で対処しきれるとは思えない。
「大人げないっすねぇ、鷹村さん」
しかし、そんな木村の思惑もむなしく、肝心な所で空気を読まない相方は更に鷹村の不機嫌を煽るのみ。
「うるせぇ!おう、青木!今日はてめぇの驕りだからな!」
「はぁ!?ふざけんなよ!この間も奢ってやったじゃねぇか!」
「今の俺様は金を払う気分じゃねぇんだよ!」
「どういう気分だ、そりゃ!喰い逃げ犯の心境か!」
「青木、今日は大人しく諦めろよ。一歩がいない時の鷹村さんはいつも以上に横暴だってわかるだろ」
だから、もう俺は知らん。テーブルに頬杖を突いた木村が呆れを込めて呟く。
最早こうなってはどうしようもない。そもそも、一歩がいない状態ではどうしたって兄貴風を吹かせる気にならなかった。
自分が大人ぶって無駄にかっこつけるのも全ては一歩の為。純粋と羨望を湛えた黒い瞳が一身に向けられるからこそ、だ。
「あー!面白くもねぇ!俺様の機嫌一つ取れないとは、役に立たねぇパシリ共だな!」」
「パシリじゃねぇ!営業妨害だからもう帰ってくれよ、あんた!」
「はんっ!こんな辛気臭ぇ店はこっちからお断りだぜ!木村ぁ!俺の分も払っとけよ!」
勢いよく席を立ちあがり、これまた乱暴に店の戸を閉めて立ち去る一人の理不尽大王。
そんな彼を見送る二人はやっと嵐が通り過ぎたと言わんばかりの表情で深い溜息を吐く他ない。
「木村・・・」
「何だよ」
「鷹村さんの分、お代」
「絶対に払わねーぞ」
何で俺があの人の代金を払わなきゃなんねぇんだ。
ラーメン屋を離れて暫く。鷹村は自分のアパートへ戻る気にもならず、唯ふらふらと道端を歩いていた。
吐き出す息は白い。直に雪が降りだすだろう。そんな事を考えながら近くの河川敷を何となしに歩く。
此処は自分と一歩が初めて出逢った場所だ。
「(そういや、頭の悪そうな不良共に絡まれてる所を俺様が助けてやったんだよなぁ)」
今になってみると少しだけ感慨深い。まさか、一歩があそこまで成長するとは思わなかった。それ故に、強く惹かれてしまう。
当初から、こいつは良いボクサーになるぞ、という確信があったとはいえ、容易くその予想を越えられては驚きも一塩だ。
あいつを大事にしてやりたい。此れまでの自分が相手してきた女たちと同じ扱いはしたくない。そんな思いばかりが胸の奥に渦巻いた。
勿論、その意味がわからない程に自分は愚鈍でもない筈。だからこそ、鷹村は今この場にいない一人の少年を想い浮かべるのだ。
「・・・俺様らしくもねぇ」
色じゃないぞえ ただ何となく
逢ってみたいは惚れたのか