2万Hit御礼小説(可愛い王者・青山みつきさま)
大神は時間をつくってはPCで携帯で「鷹一はないのか鷹一は!」とギラギラ目を光らせて忙しなく生きていたりします(なんという)。今回も日課(!)のパトロールにでていたところ、青山さんのところで運良くキリバンを踏むというミラクルを引き起こしました…!(いったいいつ悪魔と契約したんだと心配になるほど引きが良すぎる)
キリバン申請可能の表示におっかなびっくりしながら素早く鷹一を欲しがるあたりとても私らしいと思います。だってこんな機会逃がすなんてもったいなry
青山さんの小説の締めくくりが私の感想ではあまりにもあまりにも…ですので、感想は自重させていただきますね。青山さん! うまうますぐる鷹一ご馳走さまでした!
2万Hit御礼小説
「鷹村さん!!」
突如鴨川ジムに飛び込んだ大声に、ジムメンバーは各々の動きをピタリと止め、その声の主へと視線を向けた。
そこには出入口の扉を開け放したまま佇む一歩がいる。そしてズカズカと足音をたて、鷹村の方へと向かう。
無論、名指しされた鷹村も一歩の大声に気付き視線をそちらへ向けていたのだが、よもや自分の方へ眦を吊り上げやって来るとは思わな…、いや、心当たりが有りすぎて鷹村は内心気が気ではない。
普段温厚な人ほど怒ると恐い。
一歩と付き合うようになって数年経つが、本気で怒らせたのは片手で数える程少ない。そのため鷹村は、未だ“ご立腹一歩”に慣れないでいる。
二人の距離はあっという間に縮まり向かい合わせに立つ。一歩は俯いており、見下ろす側の鷹村には一歩の表情が見えない。
傍から見れば酷く落ち込んでる呈ではあるが、見様によっては静かな怒りを抑えている姿とも取れる。
一歩に何か言われる前に心当たりを片っ端から言って謝っとけと思い、鷹村は先に口を開いた。
「あー、…っと、この前借りた2万はすぐ返せるぞ!TV出演のギャラが今日中に振り込まれるからよ!」
「…。」
「この前メールしてきたキャバ嬢とはホント何っっにもねぇぞ!!キャバ嬢ってのはな、客のアドレス聞いたら必ずメールするよう言われてんだよ!あっちも商売だからな。」
「…。」
「ま、まあホラ、オッサンの付き合いで久々キャバクラ行ったもんだからよ!こっちも酔っ払っていい気分になってだな、ノリでアドレス教えちまった、すまん。」
「…。」
「あー!もしかしてレイナから電話あったのか!?あの女、オレ様のファンで…。」
「その人の名前は初めて知りました。メールの人はアイコさんでしたよ。」
「…。」
「…。」
二人の間にピリピリとした空気が流れる。
二人ともジムの中心人物である。
2トップの冷戦状態は全体に伝染し、鴨川ジム内が絶対零度に晒される。確かにピリピリと居心地の悪い空気なのだが、それよりも皆、事の成り行きが気になるという好奇心の方が勝っており、誰もこの場から離れようとしなかった。
一向に何も話そうとしない一歩に、気の短い鷹村は苛立ち始める。
「…おい。」
「何ですか?」
互いに怒気を含んだ口調で話す。
ようやく顔を上げた一歩の眦は先ほどよりも吊り上がっている。
「何ですかじゃねえよ。何でそんなに怒ってんだ?」
「怒ってません。」
「どう見たって怒ってるだろーが。ったくガキかテメェは。」
小馬鹿にした言い方に一歩の頭にカッと血が昇る。
「怒ってませんってば!知らない女性からの電話なんてもう慣れました!」
「そんなに掛かってきてねーだろ!つぅかアイツらとは何もねえって何回言やあ分かる!」
「鷹村さんの言う事なんて信用できませんっ!」
「…っんだとコラ!」
「ボクはっ!!」
鷹村のセリフを遮るように一歩は一際大きな声を張り上げる。
予想外に大きくなった自分の声にハッと驚き我に返る。
視線だけをグルリと回せばジムメンバー全員、鷹村と一歩に好奇の目を向けている。一歩はたちまち恥ずかしさに顔が火照り、先ほどよりも低い声で話す。
「ボ、ボクは、そんな言い合いをしたかったんじゃありません。」
鷹村だけに聞こえるよう小声で話す。鷹村もそれに倣い小声になる。
「じゃあなんで目ぇ吊り上げてたんだよ。」
「それは、あの、今思うと大した理由じゃないんですが。いや、でもやっぱり…。」
「あ?ハッキリ言えよ。」
「…これです。」
背負っていたリュックを前へやり、一歩はその中からレンタルDVDを取り出す。
レンタル用の透明なケース越しに見るディスクのタイトルに鷹村は見覚えがあった。
そして
「あ。」
間の抜けた顔で一歩を見る。
「思い出しました?」
「ああ…。その、すまん。」
それはレンタルビデオ店にて会員証を忘れた鷹村の代わりに一歩の会員証で借りたDVDだった。確かそれを借りたのがかれこれ…
「いつ借りたっけ?」
「2週間前です。そのお店でビデオ借りようとしたら店員さんに『お客様、未返却分がございますのでそちらを先に…』って言われてボクびっくりしたんですよ?それでタイトル確認したら…。」
これですもん、と手に持ったDVDをヒラヒラさせる。
「鷹村さんの事だから留守でも鍵開いてると思って、失礼とは思いましたが部屋にお邪魔したら、これ、レコーダーに入れたままでしたし…。」
「でもよ、まだお前がそれ持ってるって事は延長金肩代わりしてねえんだろ?だったら、んな目くじら立てんなよ。」
「この前も同じ事してボクが払ったの思い出したから、ついムカムカしちゃったんですよ!鷹村さん全然反省してないって!さ、今から返しに行きましょう!」
鷹村の右腕を掴み、ぐいぐい引っ張りながら一歩は歩く。
「お、おい、返すにしても金がねえ…。」
「今日お金が振り込まれるんですよね?」
「うっ。」
「ついでに貸した2万円と、この前代わりに払った延長金もまとめて返してもらいますからね!」
「…わーったよ。」
そして二人は鷹村の財布を取るために更衣室へ行き、
「あれ、財布新しいの買ったんですね。格好いいなあ。」
「おう、なんてったってオレ様が選んだからな。センス良くて当然だ。」
などと先程の険悪な雰囲気が嘘のように二人仲良く喋りながら歩き、鴨川ジムを後にした。
やがてジムメンバーもいつも通り練習を再開し始めた。
道中、一歩はオズオズといった調子で隣の鷹村に話し掛ける。
「あの、鷹村さん?」
「あん?」
「本当に女の人とは…。」
「しつけえな。ナンもねえよ。」
「…良かった。うたぐり深くてごめんなさい。でも鷹村さん、格好いいしモテるから不安になるんです。いつかボクなんか飽きられて…。」
「んだとコラッ。」
バシンと手の平で軽く後頭部を叩かれ、一歩は頭をさすりながら鷹村を見上げる。
「馬鹿な事考えてウジウジしてんじゃねえよ。オレ様はセンス抜群なんだからよ、選んでやったんだから自信持ちやがれ。」
「…は、はい!」
一歩の満面の笑みに、鷹村は満足げに頷く。
鷹村もまた、一歩に見放されたくはないのだ。
(くだらねぇ理由で別れてたまるか。)
他に忘れていることはないか?
レンタルビデオ店に付くまでの間、鷹村はそればかり考えていた。